「好き」を「仕事」に。

byノスケ・はる

今回は、愛知県を中心に活動されている、コスプレイヤーの神戸悠伽(コスプレネーム:タキ)さんに取材をさせていただきました!
元々はライフワーク(趣味)としてコスプレをされていましたが、現在は活動を通して町おこしに取り組むなど、お仕事になることも増えたそう。好きを仕事にするのは難しいけど、好きを貫き通していくうちに、たくさんのご縁も生まれたとのことです。
今回のインタビューでは、ライフワークを通して生まれた「人との関わり」や「仕事への繋がり」について深堀りしました。

(以降、本記事ではタキさんと表記させていただきます)

コスプレとは

「コスチューム・プレイ」の略称です。コスチューム、つまり何かの服装を真似て、その格好をして楽しむことを言います。コスプレする人を「コスプレイヤー」と呼び、コスプレイヤーは自身のことを「レイヤー」と名乗ることも。

https://www.touken-world.jp/tips/46116/

【目次】

  1. プロフィール
  2. 過去編
    • コスプレとの出会い
    • 仲間に出会えた
  3. 現在編
    • これまでの仕事と今の仕事
    • 「アス★COS」とは
    • 町おこしとコスプレ
  4. 未来編
    • コスプレはコミュニケーションのひとつ
    • 見つけるべきは「どんな生活をしたいか」

1.プロフィール

神戸悠伽(コスプレネーム:タキ)

コスプレだけでなく衣装制作も手掛けているタキさん。
アニメ、ゲーム、ミュージカルと様々な形で盛り上がる作品「刀剣乱舞」のコスプレイヤーが集まって運動会をする「刀剣乱舞大運動会」や、コスプレイヤーと地域を繋げ、地域活性化を目指すイベント「キヨ★COS」「アス★COS」の主催者でもあります。

2.過去編:コスプレとの出会い

ノスケ:本日はよろしくお願いします!
タキさんは、町おこしに繋がるほど、様々な方を巻き込んだイベントを開催されているとお聞きしました。そんなタキさんが、アニメを好きになったきっかけ、コスプレをはじめたきっかけは何だったんでしょうか?

タキさん:きっかけは、姉が持っていたアニメ雑誌を幼少期に見たことですね。当時、コスプレといえば「コミケで同人誌を販売している売り子さん」や「オフ会でのパフォーマンス」という形がメインで、公の場でコスプレイベントが開催される事はありませんでした。今よりもコスプレイヤーの人口は断然少なかったです。
コミケに参加した姉にコスプレイヤーさんの写真を見せてもらったときは「プロじゃなくても、アニメのキャラクターになれるんだ!」と驚き、 小学4年生ぐらいから自分でコスプレをしたい気持ちが徐々に大きくなっていきました。

コミケとは

同人誌・グッズ・コスプレ…あらゆる「推し活」が集まるオタク消費の中心地がコミケ。
同人誌即売会は、個人サークルが作った同人誌を頒布し、一般参加者はそれを買いに行くのが主な目的です。

https://www.trans.co.jp/column/trend/about_comiket/
オフ会とは

オフ会の「オフ」とは「オフライン」が由来です。普段は、オンライン上でやり取りをしている人たちが、オフライン、つまり実際に顔をあわせる会のこと。
ゲームや趣味のSNSコミュニティなどで出会うことが多いでしょう。

https://www.spacemarket.com/magazine/know-how/off-meeting-3/#i

2.過去編:仲間に出会えた

ノスケ:コスプレやコミケのどんな部分に惹かれたのか、お聞きしてもいいですか?

タキさん:子供の頃は、みんな漫画やアニメの話をしてたけど、高学年になる頃にはアニメ好きな人が周りから減っていて。同級生や先生から「いつまでそんなの見てるの?」と言われるようになったんです。それからは、学校で自分の好きなアニメの話をすることが出来なくなりましたね。
恥ずかしいとまではいかなくても、いわゆる「二次元」に対しての抵抗がある社会は、居心地が悪かったです。だからこそ、小学6年生の時に初めて参加したコミケでは、「アニメ好きの人ってこんなに沢山いるんだ!」という衝撃を受けました。

ノスケ:私の学校では、アニメが好きなこともみんなオープンにしているので、そんな時代があったことに驚いてます、、。

タキさん:当時「アニメは子供が見るもの」というイメージが強かったんですよね。でも実際は成人男性とか、大人もかなり多くて。イベントへ行けば、世代を問わずアニメ好きの仲間が居ました。
居心地の良い居場所を見つけられた当時は、とても嬉しかったです。子供でも大人でも、「好きなものは好きで良いと思える」「ありのままを受け入れてもらえる」場所は、私にとって安心できる場所でもありました。

3.現在編:これまでの仕事と今の仕事

はる:コスプレはライフワークということでしたが、お仕事は何をされているんでしょうか?

タキさん:今は体型補整のカウンセラーとして美容関係の仕事をしています。
職場には女性も多くて、ワークライフバランスを重視してくれる会社なので、育児やコスプレなど、仕事以外の時間も多くとれています。

ノスケ:そのお仕事についた経緯について、ぜひお聞きしたいです!

タキさん:高校を卒業してから、短大でインテリアについて学んでいましたが、学ぶにつれて生地や布の魅力に気付いて、服飾の専門学校に進学しました。
卒業後はアパレル系の会社に就職して、しばらくの間かなり忙しく仕事をしていましたね。出張続きでほとんど家に帰れないくらい激務でした。その頃は仕事に追われてコスプレの衣装制作も出来ず、イベントすら参加出来ない状態でしたね。

はる:自分の時間が取れなかったんですね。

タキさん:私が勤めてた会社は正直ブラックで「このままで良いのか」と思い悩んでいたときに、専門学生の頃からお世話になっていた会社に「うちに来ないか」と誘っていただきました。
仕事してる時間って、一生において1番長い。その長い時間を楽しく過ごせないなんて損だし、心も身体も健康じゃないと意味がない。
そんな思いで、お誘いいただいた会社への転勤を決めました。今の会社は勤務形態や福利厚生もきちんとしているし、上司含め、社内のメンバーが「アニメ好き」や「コスプレ」を受け入れてくれたのはとても嬉しかったです。
転職してから、今年でもう17年目になりました。「絶対こっちの方が楽しい」「仕事内容である体型補整を極めれば、より理想のキャラクターに近づける!」という想いで過ごせています。

ワークライフバランスとは

仕事と生活のバランスがとれた状態のこと。仕事は生活を支えるために必要なものであり、やりがいを感じさせてくれるものでもあります。

https://www.adecco.co.jp/useful/lifehack_06

3.現在編:「アス★COS」とは


はる:タキさんが主催をしている「アス★COS」について、どんなイベントなのか教えて下さい!

タキさん:足助の「アス★COS」や清洲城の「キヨ★COS」は、コスプレの力で町おこしをしよう!という趣旨のコスプレ撮影会イベントです。
「アス★COS」を開催している足助 には「香嵐渓(こうらんけい)」という観光スポットがあり、秋には紅葉を見に来る観光客で賑わいます。香嵐渓付近の街並みもすごく良いのですが、ここはまだ知らない人が多く、知る人のみぞ知る場所です。
香嵐渓周辺の店だけが繫盛して、地域全体の経済が回らないのはもったいない。そう思い、足助の自治体に「地域活性に繋がるコスプレイベント」の企画を持ち込みました。しかし、当初の観光協会の対応はかなり塩対応でした、、。

はる:塩対応、、それは辛いですね。

タキさん:理由としては、足助のロケーションに惹かれ、個人やグループでコスプレ撮影をしにくる方が居ても、そのことが周知されていないため、住民の方から「変な格好をした人がウロウロしているけど、何かあるんですか?」と行政に問い合わせが入ることがあったそうです。問い合わせだけならまだいいのですが、最悪通報されてしまうケースもあったと。
住民の方に受け入れられないことも多く、「こっそり写真を撮り、こっそり帰る」という人達が多くなっていました。それがすごくもったいないと思ったんです。

3.現在編:町おこしとコスプレ

ノスケ:「地域活性に繋がるイベント」は、具体的にはどのようなことをするのでしょうか?

タキさん:イベントに参加するコスプレイヤーやカメラマンに、足助の商店街で使える商品券を渡して、食事や買い物をしてもらうんです。参加者イベントを通して買い物をすることで、経済を回すことが出来ます。更に、そこで撮った写真をSNSにタグ付けして投稿すれば、町の宣伝にもなるんです。
江戸時代後期の貴重な建物が残る、情緒溢れる町並み。刀剣乱舞や鬼滅の刃など、和風作品のキャラクターは、コスプレがとても映えるんですよ。古民家カフェや国重要文化財になっている施設、川辺や路地裏など。本当に良いロケーションが沢山あり、いつ見てもワクワクします。
町の人との交流が増えるだけでなく、観光客とコスプレイヤーで記念撮影をしていたり、新しい交流も増えました。イベントに参加した方々からも「きれいなロケーションで撮影できただけじゃなくて、美味しいものも食べられたり、お土産を買えたり。参加して良かった!」との声を頂きました。

はる:イベントを通して、地域と人を繋げたんですね。コスプレを本業にしようとは思わなかったんですか?

タキさん:コスプレを本業にしたいと思った時期もありましたが、20代の頃にやっていたモデル活動で感じた「事務所の契約で、自分の好きなように活動をすることができない」という経験から、仕事よりライフワークとして続けるほうが、楽しくコスプレを続けられると思ったんです。
そんな経緯もあって、今でも趣味としてコスプレを続けています。
コスプレや舞台衣装の制作、撮影会イベントやマルシェなど、いろいろな方面でのコミュニティも生まれるので、仕事ではないアプローチも魅力的だと思っています。

4.未来編:コスプレはコミュニケーションのひとつ

はる:タキさんのお話を聞いて、私もコスプレに興味が湧いてきました!まず何から始めたらいいんでしょうか?

タキさん:まずは好きなキャラクターのコスプレをしてみたら良いと思います。最初は完璧を求めなくても良いんです。私も最初の頃は、知識や技術がほとんど無い状態から始めました。
初めてのコスプレは、ガンダムウイングの張五飛(チャン・ウーフェイ)というキャラクターでした。このキャラが好きなのはもちろん、黒髪黒瞳で、当時中学生だった私でも再現しやすかったところも、初めてのキャラクターに選んだ理由のひとつでした。
どこまでの完成度を求めるかは人それぞれ。楽しくやりきるのがいちばんじゃないかなと思っています。同じ趣味を持つ仲間を見つけるためのツールのひとつとして、コスプレを捉えてもいいんじゃないかなと思っています。キャラクターと、そのキャラクターを好いているファンの方に敬愛を持って楽しめば良いんです!

ノスケ:エンジョイ精神、ですね!

4.未来編:見つけるべきは「どんな生活をしたいか」

ノスケ:タキさん、今日は興味深いお話をありがとうございました!自分の「好き」を、「仕事」としてではなく「ライフワーク」として捉えることで、生き方の幅を広げられることが分かりました。
では最後に、この記事を読んでいる高校生に向けて、なにか一言お願いします!

タキさん:好きな事は、周りに何と言われようと、自分が納得するまでやればいい。続けていれば、理解してくれる人や、協力してくれる仲間に必ず出会えます。
結婚や出産をして、育児と仕事に励む毎日の中で、自分の時間も大切にしたい。でも、親はなかなか理解してくれなくて「家庭があって、仕事もあるのに、いつまで趣味に没頭しているの?」と言われることもありました。でも、活動をメディアに紹介してもらえるようになり、私の活動が世の中の役に立ってるのだと、親も少しづつ受け止めてくれるようになりました。いくつになっても、親は子供が心配なんだなと実感しましたね。

ただ漠然と「大きくなったら何になりたい?」と聞かれても、答えられない子って多いと思います。でも、自分が将来「どう過ごしていたいのか」なら、いろいろ思い浮かんできませんか?
どんな家を建てたいのか、趣味の時間はどれくらいほしいのか、結婚はしたいのか。そんなことを考えていくうちに、自分なりの将来像を見つけられると思います。
どんな仕事をしたいのか」ではなく、「どう生きたいのか」を先に考えて、それにあった仕事を見つけたり、作り出したら良いんじゃないかなと思います。

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