「小さな声が大きな力に」JICA海外協力隊での経験とは

byひとみまん

interview#006 後藤千明さん

日々ニュースで耳にする国際協力や海外協力隊。でも、実際国際協力って何をしているの?海外協力隊って具体的にどんな仕事をするの?

そんな疑問から、JICA海外協力隊経験者の後藤千明さんにお話を聞きました!

Profile:後藤 千明さん(ごとう ちあきさん)

JICA海外協力隊経験者 職種:コミュニティ開発 派遣国:エジプト、スーダン

高校生、大学生の頃のお話

JICA海外協力隊で活動している間のお話(エジプト)の大きく2つに分けてお聞きしました!

Q.高校生の時は進路はどのように考えていましたか?また、国際協力に興味があったのですか?

A.正直、高校生の時は全く興味ありませんでした。正確には国際協力についてよく知らなかったんです。

高校生の頃は、日本文化とか日本の歴史が好きだったんですが、頭の中で海外=怖いところっていうイメージがあったんです。

だから、日本の文化が学べる大学に行こうって考えていた感じです。

Q.国際協力に興味を持ったのはいつですか?また、いつ知りましたか?

A.知ったのは25歳でしたね。

大学に入って1年生の夏休みに生まれて初めて海外旅行に行ったんですけど、そこでたまたま行ったのがエジプトだったんですね。

それでドハマリしたんですよ。

初海外だったので、最初は驚きの連続でパニックでした(笑)でも帰る頃にはエジプト大ファン!になってました。当時私はどんな会社に就職したいかも分からなくて、どうしようって思っていました。そんな時に「私、エジプトが好きだな。せっかく好きだと思えるものに出会えたんだから、この気持ちを大切にして、エジプトと関われる仕事がしたいな」と思い始めました。

でもそれをどのように進路や仕事に繋げたらいいの分からなくて。

とりあえずエジプトに住んでみよう!と思い、エジプトへ渡りました。エジプトでは約4年暮らしたんですけど、最初は観光の仕事をしていました。当時の私は国際協力って聞くと、世の中の一部のすごく優秀な人達がやっている難しい仕事なんだろうなって思っていたんです。

国際協力が大切なことっていうことを頭では分かっていたんですが、でも「こんな広い世界で、私なんかが一人で行動を起こしたって、国とか世界なんて変わらないだろうな」とも思っていました。だから、「国際協力やってみたい!」と思わなかったんです。

でもそんな時、ある出来事があって私の考えが変わったんです。

教科書にも載っているかもしれないけど、エジプト革命っていう歴史的な出来事があったんです。

ちょうど私がエジプトにいる間に革命が起こって、この出来事を機に自分も国際協力やってみたいって思えたんです。エジプト革命って具体的に何があったかというと、当時エジプトで
独裁政権が続いていて、大統領を批判するようなメディアや一般人が政府から抑圧されていました。

その時に、エジプトの若い人達が政府にバレないようにSNSを使ってデモの呼び掛けをしていま
した。本当に大きいデモになって、3週間位ずっとエジプトの人達は諦めずに抗議活動を続けて、
当時の大統領を辞めさせることができたんです。この時現地にいて、エジプトの若い人達って凄
いな!と、同じ位の歳の人がちゃんと自分の国のことを考えているのを見て格好いいなって思ったんです。

こんなに凄い人がいるなら一緒に働いてみたいなって思ったし、何よりエジプトの人達は小さな声でも、集まれば国とか世界って変わるって信じてこの革命をやり遂げた。

そういった歴史的な動きを目の前で見たからこそ、私も「自分なんかが行動したってどうせ・・・」と言わずに、自分に出来る事をやってみたいなと思いました。

そんな時に、周りの人に聞いていたJICA海外協力隊に挑戦したいと思って応募したのが国際協力の道へ進んだきっかけです。

Q.現地に行くまでに1番苦労したことってなんですか?

A.

アラビア語の勉強ですね。JICA海外協力隊としてエジプトへ派遣される仲間達と一緒に、現地に行くまでアラビア語を勉強するんですが、私はエジプトでの滞在経験があったので即戦力にならないといけない、語学は完璧にしなきゃいけないと思ってめちゃめちゃ頑張りました。
私はコミュニティ開発という職種でエジプトの女性達のサポートをする役割で、「自分にできることは何でもしよう!」と思っていました。困り事を何とかして解決する、要は何でも屋でした。困り事を何とかして解決するという役割なので、とりあえず言葉が通じないと役に立たないので語学は頑張りました。

Q.現地で1番苦労したことってなんですか

現地の同僚との関係性づくりですね。信頼関係を築いたり、チームワークを良くしたりするためにどうしたらいいんだろうというところは、すごい苦労したというか、工夫しました。

私が活動していたところはエジプトの人達が運営する大きなNGOでした。そこで私は年上のスタッフとペアを組んで女性支援活動をしました。貧困層の女性達の収入をアップさせるために、彼女達が作った刺繍などの手工芸品をお預かりして、代わりに売るという仕事です。バザーとかによく出店して販売していました。

相棒の彼は経験や知識が豊富で、自信をもって仕事をしていました。なので、急に日本からボランティアが来て、最初はどう接していいのか戸惑っていました。異性だし年上だし「俺についてこい!」タイプで最初はよくぶつかっていました(笑)

でも時間をかけて、思っていることや、これからやりたいと思っていることを素直に伝え合うようにして、お互いにちょっとずつ歩み寄って、いいペアになっていった感じです。でも関係性をつくるのに半年はかかったかな~

Q.現地での一日のスケジュールを教えてください

A.イスラーム教の人が多いので金・土休みでした。9時出勤5時退勤でした。

事務所の日はそこで働いて、外で販売会がある日は商品売りに行ったり。バザーで売るのは忙しい時は週1~2回、そうでない時は月1回とかでした。他には事務所の中に展示スペースを作ったりしていましたね。

Q.現地に行って衝撃を受けたことはありますか?

A.イスラーム教は女性を守るための宗教だって言われています。エジプトには地下鉄が沢山走っているんですけど、凄いのが10両車両があるとちょうど半分の5両が女性専用車両なんです。ちゃんと平等。

お年寄りも、赤ちゃんも、この世の中皆が通る道なので社会全体で大事にするという文化があって、女性車両内の助け合いに感動しました。色んな意味で衝撃でしたね。

Q.自分が1番学びになった事や、それが今の仕事にどう活かされていると思いますか?

A.それぞれの国に優れているところがあるので、どちらかが一方的に与えるとかじゃなくて、お互いに協力して学び合いながらやるのが国際協力の仕事なんだなって学びました。

今、私は展示やイベントの企画をしていて、世界の現状やJICAの活動を皆に伝える仕事をしています。その時に「支援」や「援助」という、上から目線に少し感じる言葉を使うんじゃなくて、「国際協力は対等な立場で行うもの」ということを、特に若い世代の人達に伝えられるといいなと思うようになったので、今の自分の仕事に活きているなって思います。

Q.これからの夢はありますか?

A.個人的な夢は一生エジプトとどんな形でもいいから関わっていくことです。

仕事としての夢は、学校で国際理解教育に一生懸命取り組んでいる先生達がいると知り、日本の子どもたちに世界を知ってもらう機会を先生達と一緒に作っていけるといいなと思っています。

Q.高校生に一言お願いします

A.将来の夢や仕事を決めるときに、今のうちにできるだけたくさんの大人に会って、色んな仕事をしている人の話を聞くといいと思います。その中から、自分がどんな人に近づいていきたいのかというのを想像して道を決めるのもオススメの方法ですよ。

《番外編》

Q.エジプトのオススメの料理ってありますか?

A.モロヘイヤスープがめっちゃ美味しいです。

エジプトではモロヘイヤを刻んでネバネバのスープにして飲むんです。にんにくとチキンのだしがきいてて、毎日ご飯などにかけて食べてました。

エジプトに行く際は是非飲んでほしい!!!

後藤さん、お忙しい中取材を受けてくださりありがとうございました!

取材を通して感じたこと

国際協力や海外協力隊ってよく聞くからなんだか知ったような気になっていたので、この取材は驚きの連続でした。小さな声でも大きな力になる、というのがとても印象に残りました。

この取材を通して、自分の興味や関心の種はどこにあるのか分からないと改めて感じました。だからこそ多くの大人達を見て、視野を広げる。その姿勢を忘れずに続けていきたいと思います。byひとみまん

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